帯状疱疹 の痛み  ー急性痛から慢性痛までー

 帯状疱疹 の痛みは、ピリピリ、ズキズキ、ヒリヒリなど患者さんによって表現の仕方が大きく違います。また、帯状疱疹の出現する場所も患者さんによって様々です。顔に出てくる人もいれば、体や手足に出てくる人もいます。

 この不思議な帯状疱疹について今回はお話しします。

帯状疱疹 の根本的な原因は?

 みなさん、帯状疱疹の根本的な原因をご存知でしょうか。実は、子供の頃に罹ったことのある病気が原因です。


 それは、「水ぼうそう(水痘)」なんですよね。この水ぼうそうは、「水痘・帯状疱疹ウイルス」というウイルスが原因で小さい頃に罹っていたんです。もうお分かりですね、既にウイルスの名前に”帯状疱疹”が入っているんです。この水痘・帯状疱疹ウイルスは、水ぼうそうが完治した後も脊髄から出てきた神経節という場所にずっと潜んでいます。
 でも、帯状疱疹にいつもなっているわけではないですよね。これは、体の免疫がウイルスを抑え込んでいるため多くの人は帯状疱疹が出てこないんです。
 では、免疫を低下させる要因にはどのようなものがあるのでしょうか。意外と身近なところにこの原因が転がっています。それは、加齢、ストレス、疲労、免疫を低下させる薬の内服などです。
 その中でも、ある一定の規則を逸脱した場合は、癌による免疫低下を考慮します。その規則とは、片側、一つの神経節の領域(デルマトームに沿う)に限定的に出てくるということです。つまり、水ぼうそうのように全身ではなく片側で帯状に出てくるのです。

帯状疱疹 の特徴的な症状の出方〜治療

 帯状疱疹といえど、初めは皮膚に皮疹などはできません。最初は、皮膚の違和感や痛み、痒みを感じる程度で経過観察されることがほとんどです。しかし、その後に水ぶくれを伴う皮疹が出現し、痛みも増悪してきます。
 重症化して痛みがひどい場合は、睡眠が困難となったり、耳に症状が出た場合は難聴に、目の周りに出た場合は失明に至る可能性まであります。従って、入院で治療が必要になることもあります。
 治療は、皮膚に発疹などの症状が出始めてから72時間以内に抗ウイルス薬の投与を行うのが望ましいとされますが、この72時間以内に皮膚科などに受診される方は少ない傾向にあります。

ペインクリニックでの治療

 ペインクリニックに来られる患者さんは、もちろん痛みが強くて睡眠困難であったり仕事ができなかったりといった理由で受診されます。痛みについての記事でも記載しましたが、痛みの種類によって痛み止めの使い方が異なってきますので、その時期に応じた薬を使ってコントロールを行います。

 皮膚に皮疹がでてきて1~2週間程度は、侵害受容性疼痛の時期ですのでロキソニンやカロナールなどを使います。また、帯状疱疹は神経節で水痘・帯状疱疹ウイルスが神経そのものに障害を与えていることから神経障害性疼痛も同時に生じていると考えられ、私は、神経障害性疼痛薬も併用していきます。これらの内服薬でコントロールがつかない場合は、神経ブロックと言って痛みを感じている神経を局所麻酔薬を用いて麻痺させることで鎮痛を行うことができますが、日帰りで行う場合は局所麻酔薬の効果が数時間で切れてしまいますので、痛い場合は毎日や2日に1回など短い間隔で受診してもらうことになります。

 1~2週間程度経過すると、神経障害性疼痛が残りますので、神経障害性疼痛薬のみの内服とし神経ブロックが必要な場合は並行して行います。
 帯状疱疹の痛みは皮膚が元に戻った後も続くことがあり、患者さんの中には一生その痛みを抱えながら生活していくことになる人もいます。これは帯状疱疹後神経痛(約3ヶ月後)と診断されます。この場合、内服のみで痛みとなんとか共存する形で生活できれば良いのですが、難しい場合もあり、我々は神経そのものを熱によって破壊したり(熱凝固療法)、脊髄刺激療法(spinal cord stimulation:SCS)と言って背骨の中に刺激電極を入れて24時間365日、電気刺激による痛みのコントロールを行う治療法をとることもあります。

まとめ

 ・帯状疱疹は、水ぼうそうの同じウイルスの再活性化によって出現する。
 ・ストレスや疲労など免疫が低下した場合にこの再活性化が起こりやすい。
 ・皮疹が出てきてから72時間以内の治療が望ましい。
 ・ペインクリニックでは痛みの種類によって薬を使うが、痛みのコントロールが困難な場合は
  神経ブロックや熱凝固療法、SCSといった侵襲的な治療を行うことができる。

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