帝王切開 の麻酔  全身麻酔か脊髄くも膜下麻酔(+硬膜外麻酔)

麻酔、ペインクリニック

帝王切開 を行う理由

 母子ともに大きな問題がなければ、通常「経膣分娩」が選択されます。いわゆる、助産師さんと息んだりして数時間の末、赤ちゃんが産まれてきます。しかし、お母さんや赤ちゃんに何かしらの問題があり、経膣分娩での出産に耐えられなさそうという判断がされた場合、 帝王切開 が選択されます。帝王切開は、安全に母子ともに出産を終えるために選択されるのです。
 それぞれの要因について説明します。

 お母さん側の要因:
  ①妊娠高血圧症候群
   軽症であれば経膣分娩を行うこともありますが、重症だと赤ちゃんに栄養や酸素を送る胎盤の
   機能不全となり赤ちゃんに十分な酸素や栄養を与えることができない状況が予想され帝王切開
   が選択されます。
  ②前置胎盤
   子宮の出口付近に胎盤ができてしまう状態(通常であれば子宮の上側にできます)です。
   赤ちゃんは経膣分娩の場合、子宮の出口を通って子宮外に出てきます。しかし、前置胎盤が
   あると赤ちゃんが外に出る前に胎盤が剥がれてしまい赤ちゃんへの栄養や酸素が送れなくなった
   り、胎盤が剥がれることで大出血をすることがあり、帝王切開となります。
  ③常位胎盤早期剥離
   妊娠20週以降に胎盤が早い時期に剥がれ、胎盤からの血液が赤ちゃんに送れなくなります。
   この場合、赤ちゃんを早く出してあげたほうがよいため、緊急帝王切開となることが多いです。
  ④既往帝王切開
   1度の帝王切開の経験であれば、必ずではありませんが、それ以上では帝王切開となります。
   過去に帝王切開を経験されていると子宮の壁が弱くなっており、経膣分娩を行うと子宮破裂の
   危険性があるため帝王切開となります。
  ⑤高齢出産
   高齢(医学的には35歳以上)になると、産道が柔らかくなりにくいため難産になることが
   予想されます。また、年齢を重ねられていることから高血圧症や糖尿病などの病気を
   お持ちの方も少なくありません。これらの病気をお持ちでなくとも妊娠高血圧症候群を
   発症する確率が高く帝王切開を選択されることが多い。

 赤ちゃん側の要因:
  ①逆子など赤ちゃんの子宮内での体勢の問題
   通常であれば、頭が先に子宮の出口から出てきますが、足が子宮の出口を向いていたりすると、
   産道(経膣分娩で通る道)の途中で分娩が止まってしまうため、帝王切開となります。
  ②多胎妊娠
   双子であれば経膣分娩の可能性も残されていますが、三つ子以上では、お母さんの安全
   考慮してほとんどが帝王切開となります。
  ③児頭骨盤不均衡
   お母さんの骨盤の大きさに対して、赤ちゃんの頭の大きさが大きくて産道を通過できない
   予想される場合、帝王切開となります。

予定 帝王切開 の流れ

①手術室のベッドに横になったら、モニター(心電図、血圧計、パルスオキシメーター)をつけ、
 まずは点滴を取ります

②ベットの上で横向きになってもらい、顔はお臍を、足は体操座りするような体勢をとっていただき、
 背中を丸めていきます。これであとはじっとしているだけです。

③麻酔をかける医師(麻酔科医か産婦人科医)が針を刺す場所を確認し、針を刺し薬を入れます。
 この際に皮膚に痛み止めの麻酔をするかは医師によりまちまちです。
  基本となる麻酔は脊髄くも膜下麻酔ですが、ご希望があれば術後の痛みを和らげる目的で
 硬膜外麻酔を併用する場合があります。この際、刺す場所が1ヶ所の場合と2ヶ所の場合がありますの
 で事前に気になる場合は質問しておくといいでしょう。(また、施設により麻酔方法は異なりますので
 出産を予定している病院に詳細については聞いていただくといいと思います。)

④薬が投与されると数分もしないうちに足の力が入らなくなり、感覚も麻痺します。ここでどこまで
 麻酔が効いているかを確かめるために温痛覚(先の尖ったもので皮膚を刺激したり、アルコール綿を
 皮膚に接触させるなど)で確認をします。

⑤問題なければ尿道カテーテルを留置して、手術開始となります。手術中は寝ていないため周りの音や
 話し声が聞こえたりします。また、全く感覚がなくなるわけではないので、皮膚を触られたり、
 引っ張られたりする違和感は残ったままです。

⑥赤ちゃんが取り上げられたら、羊水などを拭き取ってからお母さんとの対面になります。

⑦対面後は、先に赤ちゃんは保育器に入れられて手術室から病棟に移動します。お母さんも止血などの
 確認ができたら傷を縫って手術終了となります。手術時間は1時間前後くらいが標準的です。麻酔も
 4~5時間で切れてきますのでその後は点滴や内服のお薬を使いながら痛みをコントロールします。

全身麻酔での 帝王切開

 全身麻酔での帝王切開はほとんどの場合が緊急手術となりますので、通常の全身麻酔と何が違うのかについて説明します。

 全身麻酔で使う薬は、胎盤を通過して赤ちゃんにも麻酔がかかってしまいます。従って、麻酔を始めてからいかに早く赤ちゃんを取り上げるかが勝負となります。赤ちゃんが寝てしまって出てきたら一時的にチューブを口から入れて人工呼吸を行うこともあります。

 いち早く赤ちゃんを取り上げるために、、、
尿道カテーテルや手術する場所の消毒などできることは麻酔をかける前に全てやっておきます。これらの準備ができたら、酸素を十分に体に取り入れてもらった後(妊婦さんは無呼吸に耐えれる時間が短い)に、薬を投与しチューブが無事気管に入ったことが確認できたらその場で手術を開始してもらいます。
 あとは手術が無事に終われば通常の全身麻酔と同様の流れになります。(詳しくはこちら)

まとめ

 今回は帝王切開の麻酔方法についてご紹介しました。

 帝王切開は、お母さんや赤ちゃんを安全に出産まで導くための方法なので安心して
 受けていただければと思います。

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