【麻酔科医からの視点】 高血圧 について

血圧計麻酔、ペインクリニック

 高血圧 症は、脳卒中(脳出血くも膜下出血、脳梗塞など)や心疾患(心筋梗塞など)の最も危険な要因に挙げられています。この脳卒中や心疾患は、高齢者において癌と同じくらいの死亡要因となっていますので、血圧の十分なコントロールが求められています。

日本の 高血圧 患者数

 日本には、高血圧の方がどれくらいいるのでしょうか。

 高血圧の患者さんは日本に約4300万人にいると予想されています。日本の人口は約1.2億人ですので、およそ3人に1人が高血圧ということになります。生活習慣病と言われるだけあって、すごく多いですよね。
 この4300万人のうち、血圧が適切な患者さんは1200万人しかいないそうです。つまり、残りの3100万人の方は血圧が適切ではありません。内訳として、ご自身が高血圧であることを知らない方が1400万人、知ってはいるが治療をしていない人が450万人、治療はしているものの目標のコントロールを得られていない患者さんが1250万人と推計されています。

 血圧を適切にコントロールされている患者さんは少なく、血圧が高いまま生活している方が多くいるのがわかりますね。

高血圧 が起こす病気   命に関わる病気につながる

動脈硬化

 高血圧の状態が続いた結果、どんな病気になってしまうのか。

 血圧が高い状態が続くと、血管の柔らかさが失われ、血管の壁が厚く、硬くなり、血管は壊れやすくつまりやすい状態になります。これが動脈硬化です。この動脈硬化は、大小様々な血管に生じます。そうです、全身の血管に起こりますので、様々な臓器の血管にも等しく動脈硬化は生じていきます。

 脳では、脳梗塞・脳出血・脳動脈瘤など

 心臓では、狭心症・心筋梗塞・大動脈瘤・大動脈解離など

 腎臓では、腎硬化症となり腎機能障害への進展など

 このように、全身の臓器に悪影響を及ぼすのです。

高血圧 患者さんの全身麻酔  日常生活での血圧コントロールの重要性

 全身麻酔をかけると、血圧は麻酔の影響で必ず低下します。この低下の程度は、動脈硬化が進んでいる患者さんであればあるほど下がり幅が大きくなります。なぜなら、血管の弾力性が失われ調節性が低下しているからです。

 ということは、普段生活している血圧よりも麻酔中の血圧は必ず低くなります。ここで考えなければならないことは、詰まりやすく細くなった血管に対して普段より低い血圧で臓器への血流が十分維持されるかどうかということです。血流は維持されないと考えられますよね。しかも、麻酔中は痛みや麻痺などが出ても症状を訴えることすらできないのです。麻酔から覚めたら、脳梗塞になっている可能性もあります。

 例えば、血圧が①130/70mmHg台でコントロールされていた方、②180/90mmHg台で生活していた方に全身麻酔をかけるとします。麻酔により、血圧は低下し100/60mmHgに低下した場合、②の方が臓器への血流が不十分となる可能性が高いことは一目瞭然と言えるでしょう。

 それなら、「血圧を上げる薬を使って生活している時の血圧にすればいいんじゃ?」って思いますよね。もちろん緊急手術で全身麻酔をかけなければならない血圧コントロール不良な患者さんにはその手段を取らざるを得ません。
 しかし、血圧を上げる薬は、心臓に鞭を打って動かしたり(心臓に負担)、血管を収縮させる(細い血管は血流が悪くなる)ことで血圧をあげます。そうです、結局臓器に負担をかけることにつながります。なので、日常生活における血圧をコントロールしておくことが全身麻酔での合併症発生を防ぐために重要なこととなります。

まとめ

 血圧を適切にコントロールすることは、全身麻酔に限らずとても大切なことです。これを読んでいただいた方の中で、血圧が高い方がいれば是非近くの病院に一度受診してください。

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