近年、腹腔鏡を用いた手術(いわゆるカメラを用いる)が大半を占めるようになってきた。腹腔鏡手術では、2〜3cm程度のキズが約4~6ヶ所できるくらいで「開腹手術に比べ疼痛は少ない」と考えられている。また、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)を内服している患者さんの増加もあり、 硬膜外 麻酔を施行する機会は減少したものの、ある一定数の開腹手術が行われており全身麻酔+ 硬膜外 麻酔が行われている。
硬膜外 腔ってどこのこと?
硬膜外腔は、脊髄および神経根を覆う硬膜と前方は後縦靱帯、後方は黄色靱帯または椎弓板との間の空間のこと。ここには、脂肪、疎性結合組織、血管、リンパ管が存在している。つまり、硬膜外腔という空間には、神経そのものは存在していない。
硬膜外 麻酔 の作用の仕方
硬膜外腔に投与された局所麻酔薬は、周辺の組織(傍脊椎腔やくも膜下腔)へ流れて神経に作用したり、血管から吸収されて効果を発揮すると考えられている。鎮痛の質としては、運動麻痺を生じさせず、しっかりとした鎮痛を得ることができるため、とても良い方法となります。
このため局所麻酔薬の種類や濃度などによっては、運動神経麻痺が生じる可能性は十分にあるため注意が必要である。
どんな症例に 硬膜外 麻酔 をするの?
もちろん、開腹手術がメインではありますが、産科領域では無痛分娩の麻酔に、ペインクリニックでも疼痛コントロールの方法として多く行われています。
しかし、合併症もあり、場合によっては後遺症を残すようなものもあります。
硬膜外 麻酔の合併症
- 硬膜外血腫:硬膜外腔で出血が生じ、血腫ができた状態のこと。硬膜外腔は背骨の中で周囲を骨で覆われているため血腫が大きくなると、脊髄を圧迫し膀胱直腸障害や対麻痺を生じる。
→重症の場合は脊椎の緊急手術となる。 - 硬膜外膿瘍:硬膜外腔で感染が生じ、膿瘍を形成した状態。硬膜外血腫と同様に膿瘍が大きくなると、脊髄を圧迫し膀胱直腸障害や対麻痺を生じる。
→重症の場合は脊椎の緊急手術となる。 - 脊髄損傷:硬膜外腔の先には、脊髄が浮かんでいるくも膜下腔があるため、針が深く侵入すると脊髄を傷つける可能性がある。
これらの他にもいくつか合併症がある。
硬膜外麻酔の穿刺時の患者さんの体勢
ベットで横向きになってもらい、体操座りするように膝を抱え、顔はお臍を見るようにし、背中をできる限り丸めた状態を保持してもらいます。局所麻酔を皮膚にしますが、骨に針が当たると痛みを感じることがありますので、痛みを感じた場合は動かずに言葉で教えてください。急な動きは、合併症の確率を上げてしまうため大変危険です。
まとめ
硬膜外麻酔は、良質な鎮痛を得ることができる大変良い方法ですが、合併症も重篤なものもありますので、リスクとベネフィットを天秤にかけ、ベネフィットが上回る場合に施行します。
手術や痛みでお困りの際は、一度医師に鎮痛法について質問してみてください。
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