腎 機能障害のある場合、麻酔科医は何に気をつけているのでしょうか。また、腎機能障害がある場合、麻酔を受けるにおいてどのような危険性があるのでしょうか。
今回、このような内容が理解していただけるように、書いていきたいと思います😄
腎 臓の構造について
腎臓は、血液を濾過して尿を作る濾過装置のような働きをしています。この尿を作成するのが、腎臓の中にあるネフロンという構造です。このネフロンは腎臓1つに対して100万個存在しています。
ネフロンは、糸球体(毛細血管の塊)とボウマン嚢と尿細管で構成されています。
腎 臓の機能って?
腎臓の機能と一言に言っても様々な役割があります😄
➡️体の水分量の調整、体の酸・塩基平衡の維持、老廃物の排泄、電解質(Na,Kなど)のコントロールなどなど、、、
それぞれの詳しい内容は、割愛させていただきますが、これらの機能が低下することにより、死に至るような不整脈や心不全が起こったりします。
このような症状が起きないように、腎機能が廃絶してしまった場合は”透析”を受けることになります。
腎臓の機能を簡単に表現すると、「尿を作って、いらないものを体外に出してくれる」働きをしています。
麻酔と 腎 機能について
腎臓の機能である体の水分バランスや電解質のコントロールは、麻酔中に限定した場合その大部分を尿量に依存しています。この尿量は、平均血圧が低いと減少することが多く、以前の記事の通り麻酔をかけることで血圧は必ず低下するため、麻酔中は覚醒時に比べて血圧が低下傾向となり、尿量は少なくなる傾向になります。
➡️この減少傾向は、もともと腎臓の機能が低下している場合により顕著に現れます。つまり、最悪の場合麻酔中に尿量が確保できないことも考えられるのです。
➡️麻酔中は水分が点滴から入ったりしますので、体液過多、電解質異常が起きやすく、心不全や不整脈につながりやすくなります。
腎 機能低下症例における麻酔管理の考え方
・電解質について:
麻酔管理上、最も注意すべき電解質はK(カリウム)です。異常高値の場合、死にいたる不整脈を引き起こす可能性があります。
麻酔中での対処方法は、まず「輸液の中にKを混ぜない」ということです。つまり、生理食塩水やKN1号などの開始液と言われるよな種類の輸液選択を行います。これでも、Kのコントロールがつかない場合は、GI(グルコース-インスリン)療法や血清カルシウム値を維持します。それでも難しい場合は、施設によりますが手術中から血液浄化療法を併用することも考慮します。
・血圧や水分コントロールについて:
麻酔中は必ず血圧が低下します。これは、血管拡張による低下が大きな要因となっていますので血管収縮薬(ネオシネジンやNAdなど)を持続投与することで血圧の維持、さらには余分な水分を投与する必要がなくなるので、水分コントロールにもつながります。
ただし、緊急手術では、この限りではなくしっかりと水分を投与し術後に血液浄化を回しバランスをとることも考慮します。
・酸・塩基平衡について: 手術中に陥る可能性があるのが、アシドーシス(体が酸性に傾くこと)です。アシドーシスは、心臓の異常や昇圧薬の不応性などにつながります。腎機能低下によるアシドーシスは、呼吸性代償を行いますが原因として+αの要因が生じた場合、呼吸性代償のみでは限界があり、メイロンの投与で無理やり酸・塩基平衡を戻すことがあります。これは、根本的解決にはならず早期に手術を完遂してもらい術後に必要であれば血液浄化を行うことを考慮します。
まとめ
腎機能障害症例での麻酔管理について、簡単に説明しました。
研修医の先生やオペ室看護師さんは、参考にしていただければ幸いです。
日本腎臓学会のHPはこちらから。
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